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ウェブトゥーンの台頭と日本マンガへの影響 – 縦スクロール×フルカラーは、産業の地殻変動か

スマホ・フルカラー・縦読みが起こした「習慣移行」

韓国発の縦スクロール型フルカラー漫画=ウェブトゥーンは、スマートフォンに最適化された体験(1話完読のテンポ、指一本の連続読書、音・縦演出)で、読書習慣そのものを変えました。

国内外のプラットフォームが「待てば無料」「数十円の先読み(Fast Pass)」といったマイクロ課金を磨き上げ、若年層を中心に可処分時間と支出を取り込みました。

米ナスダックに上場したWEBTOON Entertainment(NAVER系)は、170M MAU規模・23年売上約$1.28Bと開示し、17–23年にクリエイターへ累計$2.8B超を分配したとS-1で示しています。(Reuters, フィナンシャル・タイムズ, ウォール・ストリート・ジャーナル, SEC)

市場概況:韓国は「2兆ウォン超」へ、日本は「電子が7割」

韓国のウェブトゥーン産業規模は、22年1.829兆ウォンから23年2.189兆ウォンへ(+19.7%)。プラットフォーム売上が全体の過半を占め、輸出・翻訳拡大で外需も牽引しています(為替≒1KRW=0.11JPYで概算すると約2,400億円規模)。(welcon.kocca.kr)

一方、日本のコミック市場は23年に6,937億円で過去最高を更新。内訳は紙2,107億円・電子4,830億円で、電子が市場の約7割を占めます(図1)。紙の落ち込みをデジタルが補い、プラットフォーム主導のヒット創出が定着しました。(Nippon)

図1:日本コミック市場の内訳(2023、出版科学研究所)

プラットフォーム競争:日本ではLINEマンガ vs. ピッコマ

2025年に入り、日本アプリ市場の総合課金ランキングでLINEマンガが首位を連続確保(Sensor Tower・data.aiの集計)。長く王者だったピッコマとのシェア争いが新段階に入っています。(Real Sound|リアルサウンド, 朝鮮日報)

この背景には、NAVER陣営の攻勢(WEBTOONの上場資金調達、LINEマンガの大型キャンペーン、縦読み最適作品の増強)と、KAKAO陣営の日本向けプロモーション再加速があり、ユーザー側は「待てば無料×先読み課金×紙単行本」という複線消費を器用に使い分けています。(フィナンシャル・タイムズ, Real Sound|リアルサウンド)

作品供給:韓国→日本アニメ化、日本→ウェブトゥーン化の双方向

韓国発ヒットの日本アニメ化では『俺だけレベルアップな件(Solo Leveling)』が象徴的。25年のCrunchyroll Anime Awardsで作品賞を含む多数を受賞し、視聴指標でも歴代級の到達を示しました。(Kakao Entertainment)

実写化では『Sweet Home』『今、私たちの学校は…(All of Us Are Dead)』など、ウェブトゥーン原作→Netflixの大型化路線が継続しています。(Netflixについて)

逆に、日本原作の「ウェブトゥーン化」も加速。集英社は24年に縦読みアプリ「ジャンプTOON」を立ち上げ、人気作のタテカラー版を含む28作品で創刊。

25年には『鋼の錬金術師』のフルカラー縦読み版がWEBTOONで開始するなど、「名作の再編集×新規読者獲得」の動きが見えます。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, Anime Corner)

KADOKAWAの「タテスクコミック」も、国内外同時公募のアワードを毎年開催し、縦読みの制作エコシステムを整備中です。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES)

制作と表現:縦スクロールの言語

ウェブトゥーンはコマの「呼吸」を縦に再設計し、間(余白)と演出(効果線・アニメ的動線・音)で没入を高めます。1エピソードの読了時間は短く、通知やSNS導線と親和。

S-1によれば、数十円レベルのマイクロ課金(Fast Pass等)や広告を組み合わせた収益モデルを明示しています。(SEC)

この設計思想は、日本の週刊連載的な「起伏の作り方」「見開きの迫力」とは流儀が異なります。

従来の名作を縦読み化すると相性差が露呈しがちで、最初からタテ用に設計する「ネイティブ制作」の重要性が上がっています(各社のタテ最適レーベル動向参照)。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, カドコミ (コミックウォーカー))

価値連鎖:プラットフォーム主導のIP多面展開

ウェブトゥーンのIPは、プラットフォームでの先読み課金・広告で初期回収しつつ、紙・映像・音楽・グッズへ拡張する「多面展開」でLTV(顧客生涯価値)を伸ばします。

欧米ではPRHのInklore、WEBTOON Unscrolled、Scholasticの参入など紙の量産体制が整い、量販流通で認知を上げる再循環が生まれました(図2)。(PRH Comics, PublishersWeekly.com, シュレスタリック)

図2:ウェブトゥーン価値連鎖(制作→プラットフォーム→マネタイズ→IP拡張→二次収益)

韓国の規模推移と日本の「電子7割」を可視化

韓国ウェブトゥーン産業は21年1.566兆→22年1.829兆→23年2.189兆ウォンと三年で約1.4倍(図3)。日本では電子の構成比が69.6%で、もはや「デジタルが本流」。この地殻変動が編集・制作・広告の現場を作法ごと更新しています。(문화체육관광부, welcon.kocca.kr)

図3:韓国ウェブトゥーン産業の売上推移(2021–2023)

日本マンガ産業へのインパクト:機会と課題

機会

  • 国際同発×多言語ローカライズ:初回から英/韓/中で同時展開し、ランキング露出で海外読者を刈り取る。印税はデジタル先行で、紙は「蒐集物」として二次収益へ。(PRH Comics, PublishersWeekly.com)
  • 映像・音楽との相乗:アニメ/ドラマ化を「アプリ内の完読・課金」に循環させる。『Solo Leveling』のように、映像の世界的大当たりが原作回帰を誘発する。(Kakao Entertainment)

課題

  • 制作体制の再訓練:横読みに最適化されたコマ割り・見開きの美学を、縦演出・フルカラーで再発明する必要。
  • 指標運用:先読み課金、完読率、離脱点、広告充填率などのKPI運用が「編集力」の一部に。S-1の収益区分(Paid Content/Ads)に沿ったダッシュボード化が鍵。(SEC)
  • IP権利と座組:制作(クリエイター/スタジオ)—プラットフォーム—出版社—映像—流通の間で、翻訳・配信・二次利用の条件を早期に設計(図2参照)。

提言:日本発ウェブトゥーンで勝つ3つの打ち手

  1. タテ読みネイティブ設計:構図・演出・色をタテ最適化し、1話7〜12分完読のテンポでKPIを回す。
  2. 同時多面リリース:アプリ内イベント(無料開放・ポイント配布)と紙の新装版・海外版を同週で束ね、アルゴリズム露出を最大化。(Real Sound|リアルサウンド)
  3. 共同制作アライアンス:国内レーベル(ジャンプTOON/タテスク)と海外配給(WEBTOON Unscrolled/Inklore)を早期に束ね、翻訳・プリント・映像のパイプを既設経路に乗せる。(プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES, PRH Comics)

参考資料(主要出典)

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